障がい者スポーツ、とくにパラリンピックにつながる競技の源流は、戦後のリハビリテーションとしてのスポーツにあります。現在では国際的な競技スポーツとして発展し、高い競技性を備えたパラスポーツとして広く認知されています。しかし、実際に参加を検討する際には課題もあります。本記事では、現状の課題から将来の可能性まで詳しく解説します。
障がい者スポーツとは?定義と参加する人々について
障がい者スポーツとは、障がいのある方が、障がいの種類や程度、体調に合わせて、ルールや用具、環境を調整しながら行うスポーツの総称です。日本では、パラスポーツと呼ばれることもあります。
「パラリンピック」という名称は、現在ではギリシャ語の前置詞 para(そばで、並行して)と Olympic に由来し、オリンピックと並行して行われる大会を指すと説明されています。なお、この言葉には、かつて paraplegic と Olympic を組み合わせて用いられた経緯もあります。
多様なバックグラウンドを持つ参加者たち
参加者の範囲は非常に幅広く、性別や年齢、障がいの種類や程度を問いません。健康維持のために地域のサークルでレクリエーションとして楽しむ方から、世界最高峰の舞台を目指すトップアスリートまで、目的は千差万別です。
障がい者スポーツの現状と活動を支える環境

近年のパラスポーツへの注目度の高まりを受け、障がいのある方がスポーツに取り組みやすい環境づくりが進められています。スポーツ庁は、地域の身近なスポーツ施設におけるバリアフリー化やユニバーサルデザイン化の推進に取り組んでいます。
これにより、車いすを利用する方も含めて、移動や利用に配慮された施設や運用が広がりやすくなります。実際の利用にあたっては、スロープや多目的トイレの有無などを事前に確認しながら、無理のない範囲で参加しやすくなります。
認知度の向上と社会的な理解の深まり
東京2020大会の前後で、「パラスポーツ」という言葉は7割以上が認知していることが報告されています。また、東京大会直後には「知っている(理解している)」との回答が10%以上増えたという結果も示されています。テレビやインターネットでの中継や発信が増えたことで、競技のルールや迫力に触れる機会が広がっています。
| 調査項目 | 現在の状況とデータ傾向 |
|---|---|
| 認知の状況 | 「パラスポーツ」を認知(知っている・聞いたことがある)している人は7割以上で、東京大会直後に「知っている(理解している)」が10%以上増えたと報告されています。 |
| 週1回以上の実施率 | 成人(20歳以上)の障がいのある人の週1回以上のスポーツ実施率は32.8%で、スポーツ基本計画等では40%程度の目標が示されています。 |
| 活動場所の例 | 公共スポーツ施設に加え、障害者専用・優先スポーツ施設(全国141施設)や、学校施設を練習場として提供する取り組みなどが報告されています。 |
活動を支えるソフト面での充実も進んでいます。日本パラスポーツ協会が公認する障がい者スポーツ指導員は、障がいのある方が安全にスポーツへ参加できるよう支援し、教室や大会などの現場でサポートする役割を担います。
また、障害者専用・優先スポーツ施設では、初級の指導員を配置している施設が多いことが調査で示されています。地域によっては、関係団体の派遣や協力者のサポートによって、教室運営や大会運営が支えられている場合もあります。
一方で、地域による環境の差があることも課題として指摘されています。国や自治体は、障がいの有無を問わず身近な場所でスポーツを実施できる環境整備を進めています。
直面している課題と解決に向けた取り組み
障がい者スポーツが広がる一方で、現場では解決すべき課題が残っています。なかでも、日常的な活動場所を確保しにくいことは課題として挙げられています。一部の施設では、受け入れ体制が整っていないことなどを理由に、利用が制限される場合があります。
例えば、競技用の車いすが体育館の床を傷つけるのではないかという懸念や、重度の障がいがある方の安全管理に対する不安から、利用を断られることがあります。また、車いす利用者への配慮があっても、他の障がいのある方にとって利用しにくい運用になっている場合もあります。
これらは、施設側に障がい者スポーツの受け入れに関する知識不足や経験の不足がある場合に起こりやすいです。
経済的負担
競技を本格的に続けるためには、多額の費用がかかることも大きな課題です。競技用の車いすや義足などの専用用具は高額になりやすく、一般向けのスポーツ用具と比べて費用負担が大きくなります。
- 競技用車いすはカスタム製作で30万円台から、競技種目や構成によってはさらに高額になる例が示されています。スポーツ用義足も構成によっては100万円以上かかる例があります。
- 遠征費やコーチの指導料に加えて、介助者が必要な場合は同行者の旅費なども発生し、交通費を含む活動費の確保が負担になることがあります。
- 自宅周辺に適切な施設がない場合、移動距離や移動時間が増えやすく、移動手段の確保が難しい方にとって参加のハードルが上がります。
障がい者スポーツが切り拓く将来の道

障がい者スポーツに取り組むことは、単なる体力作りや趣味の範囲にとどまらず、競技経験を将来の進路につなげるデュアルキャリアなどの選択肢が広がっています。
特に、企業がパラアスリートを社員として雇用し、競技活動に配慮する取り組みが見られます。企業アンケートでは、障害者アスリートを社員として雇用している企業があり、その内訳として正社員が一定割合を占めることが報告されています。こうした雇用は、競技を続けながら生活基盤を整えやすくする一つの形になります。
~企業様による障がい者アスリート雇用は、東京2020パラリンピック競技大会(2021年)開催を契機に拡大し、現在も継続的に成長しています。障がい者アスリート雇用のムーブメントは、法定雇用率の引き上げ、ダイバーシティ推進、ESG経営の重視、さらにはパラスポーツへの社会的関心の高まりを背景として拡大を続けています。障がい者が「スポーツ」を通して社会への参加を実質的なものとするためには、障がい者が能力を最大限発揮し自己実現できるよう、社会が支援していくことも重要な要素と考えております。~
多様なキャリアパスの形成
競技者としての現役を引退した後も、スポーツに関わり続ける道はあります。例えば、自身の経験を次世代に伝える指導者として活動したり、メディアや講演などを通じて競技の魅力を発信したりできます。
また、デュアルキャリアを進める上では、競技以外での自身の価値を把握することが重要だと指摘されています。競技で培った自己管理や目標設定などを整理し、仕事に結び付く付加価値として言語化すると伝わりやすくなります。
認知度向上の重要性と私たちができること
障がい者スポーツやパラスポーツについては、東京2020大会の前後で認知や理解が高まったという意識調査の結果が報告されています。その関心を一過性の話題で終わらせず、継続的な理解と参加につなげることが大切です。
私たちができる最初の一歩は、まず「知ること」です。競技のルールを学び、選手たちの個性を知ることで、応援はより熱を帯びたものになります。地域の大会があれば実際に会場に足を運び、現場の空気感を肌で感じてみてください。
共に社会を変えていくサポーターとして
スポーツに参加する方法は、プレーすることだけではありません。運営を支えるボランティアや、SNSを通じた情報発信、さらには企業のスポンサー支援など、多様な関わり方があります。これらの行動が、競技環境の改善を支えます。
- 地域の障がい者スポーツ体験会に参加して、障がいの有無に関係なく、純粋にスポーツの楽しさを共有する体験を大切にしましょう。
- ボランティア活動を通じて選手やその家族と交流し、現場が抱えるニーズを直接聞き取ることで、より具体的な支援の形が見えてきます。
- 職場や学校で障がい者スポーツの話題を出し、周囲の関心を高めることも普及活動になります。正しい知識を共有することが、偏見をなくす一歩になります。
- 公共施設の利用ルールについて、障がい者に配慮した運用を求める声を上げるなど、市民としての働きかけも社会を変える力になります。
障がい者スポーツの発展は、障がい者だけでなく、高齢者や子ども、一時的に怪我をした人など、すべての人にとって「動きやすい、過ごしやすい社会」を作ることにつながります。それは結果として、私たち全員の生活を豊かにすることにつながります。
2026年以降、さらに成熟したスポーツ文化を築くためには、一人ひとりの眼差しと行動が欠かせません。誰もが等しく挑戦し、称え合える社会の実現に向けて、今自分にできることから始めてみることが、第一歩になります。
まとめ

障がい者スポーツは、多様な特性を持つ人々が輝ける場を提供し、社会の認知度も飛躍的に向上しています。一方で、専用用具のコストや施設利用の制限といった切実な課題が残されており、これらを社会全体で解決していく姿勢が求められています。
あとがき
この記事を作成する中で、「アスリート雇用」という仕組みがあることを初めて知りました。競技に挑戦するだけでなく、うまくいけば雇用にも結びつく可能性があるという点は、とてもすごい仕組みだと感じています。
スポーツを通じて社会参加や働き方の選択肢が広がるのは、素晴らしいことだと思いました。


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