ペースメーカーICDとスポーツの両立!禁止の運動と安全な歩み

障がい者スポーツ支援
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ペースメーカーやICDを植え込んだ後でも、体調や基礎心疾患、デバイスの設定に応じて、安全に運動やスポーツを再開できる可能性はあります。しかし、術後早期の無理な動きや胸部への衝撃、植込み側の腕の使いすぎ、ICDの不適切作動、磁気や電磁干渉などには十分な注意が必要です。この記事では、再開時期の目安、慎重に判断したい競技、日常で意識したい安全対策、無理なく続ける運動習慣の考え方を、初めての方にもわかりやすく紹介します。

術後のスポーツ再開時期と運動強度の考え方

ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)の植込み手術を終えた直後は、早く日常生活や運動に戻りたいと感じやすい時期ですが、自己判断で激しい運動を始めることは避けましょう。

~ペースメーカとは

ペースメーカは鎖骨の下の皮下に留置した本体と心臓内に留置したリードからなり(図)、本体で発生させた電気刺激をリードを通して心臓に伝えて心臓を動かす器械です。脈拍が遅くなる疾患が適応になります。ペースメーカには多彩な機能があり、個人個人に合わせた設定が可能です。~

心臓病センター榊原病院

~ICD(植え込み型除細動器)について

ICD(植え込み型除細動器:図1)は、脈がはやくなる頻脈性の不整脈、中でも心臓のポンプの働きを担う心室が頻脈になる心室頻拍もしくは心室細動による突然死の予防を図るための器械です。ICDは常にあなたの心拍を見張り、頻拍の発生を検知すると不整脈が停止するよう自動的に電気ショックなどの治療を行います。~

国立循環器病研究センター

一般的な目安として、新規の経静脈的なペースメーカーやICDの植込み後は、スポーツ再開まで4〜6週間ほど待ち、その間に創部の回復、リードの安定、デバイスの作動状況を確認していきます。

ただし、再開時期は全員一律ではありません。リードレス機種やジェネレーター交換後では待機期間が短くなることもあり、反対に基礎心疾患の状態や不整脈の経過によっては、さらに慎重な判断が必要になる場合もあります。

特に術後早期は、植込み側の腕を肩より高く大きく上げる動作や、重い荷物を持つ動作、強く押す・引く動作によって、リードのズレや植込み部への負担が生じるおそれがあります。日常生活でも無理のない範囲を守ることが大切です。

一方で、肩をまったく動かさないと関節がこわばることもあるため、術側の腕は肩より下の範囲で無理なく動かし、具体的な可動域や時期は主治医や医療スタッフの指示に従って進めましょう。

スポーツを再開するタイミングや運動の強さは、創部の治り具合だけでなく、もともとの心疾患、心機能、体力、年齢、服薬内容、デバイスの設定によっても変わります。ご自身だけで決めず、定期受診の際に主治医へ確認することが大切です。

また、運動強度はメッツだけで決めるのではなく、運動負荷試験の結果、ボルグ指数、自覚症状、会話のしやすさ、主治医から示された心拍数の上限などを組み合わせて判断すると、より安全です。

胸部への衝撃が起こりやすい競技や、植込み側の上肢を繰り返し強く使う競技では、デバイス本体やリードに負担がかかることがあります。接触の多い競技や、テニス、水泳、ゴルフなどの再開は、種目ごとに主治医へ相談してください。

安全に運動習慣を身につけるためには、次のようなセルフチェックを意識すると役立ちます。

  • 会話を無理なく続けられる強さを目安にする。
  • 胸痛、強い息切れ、めまい、動悸、失神しそうな感じが出たら、すぐに中止して休む。
  • 医師から目標心拍数や上限心拍数の指示がある場合は、その範囲を守る。

いきなり長時間の運動やランニングを始めるのではなく、まずは主治医の許可を得たうえで、短時間のウォーキングから段階的に進めていきましょう。体調に問題がなければ、時間や頻度を少しずつ増やしていくことが大切です。

自分の体調の変化を丁寧に見ながら、無理のない範囲で継続することが、安全にスポーツを楽しむための基本です。不安があるときや症状が出たときは、運動を続けずに早めに医療機関へ相談しましょう。

デバイス保護と安全のために慎重な判断が必要なスポーツ種目

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スポーツを楽しむ際に特に注意したいのは、植え込んだデバイス本体やリードに負担がかかる胸部外傷です。ペースメーカーやICDでは、胸に強い衝撃が加わる競技は、一般に避けるか厳重な注意のもとで行うことが勧められます。

ただし、すべての種目が一律に禁止されるわけではなく、基礎心疾患、デバイスの種類、リードの有無、競技レベルによって判断が分かれるため、最終的には個別判断が必要です。

具体的に注意が必要な種目を、主な理由ごとに以下の表へまとめました。

カテゴリー具体的な種目主な注意点
胸部への衝撃が大きい競技ラグビー、ボクシング、レスリング、ホッケー、防具を着けない格闘技デバイス本体やリードへの直接的な外力
上肢の反復動作が多い競技テニス、卓球、ゴルフ、水泳経静脈リードへの繰り返し負荷による損傷リスク
ICDで特に注意する競技登山、ダイビング、モータースポーツ、ハンググライダー一過性の意識消失が重大事故につながるおそれ

このような競技は、胸部への直接衝撃や反復動作によって、デバイスやリードに負担がかかる可能性があります。そのため、「全面的に禁止」と言い切るよりも、「高リスクのため原則として避けるか、主治医と相談して慎重に判断する」と表現するほうが正確です。

また、サッカーやバスケットボール、野球のように胸部への接触やボールの直撃が起こりうる競技でも、状況によっては保護パッドの使用で実施可能とされることがあります。ただし、安全性はポジションや競技強度によって異なるため、遊びの範囲であっても不意の衝突や転倒には十分な注意が必要です。

ICD(植込み型除細動器)使用者の特別な注意点

ICDを使用している方は、運動を一律に避けるのではなく、不適切作動を防ぐために、主治医と相談しながら個別に運動強度を調整することが大切です。

ICDは、命に関わる不整脈を検知して電気治療を行う装置です。運動そのものが直ちに危険というわけではありませんが、運動時の心拍数上昇や一部の不整脈が設定された検出条件に重なると、適切でない作動が起こることがあります。そのため、運動を始める前に、病状が安定しているか、デバイス設定が現在の運動量に合っているかを主治医に確認することが重要です。

運動中に予期しない電気ショックが起こると、転倒や強い不安につながることがあります。一方で、ICD植込み後の運動療法や心臓リハビリテーションは、病状が安定していれば運動耐容能や生活の質の改善に役立つとされています。安全を確保するために、以下のルールを守りましょう。

  • 運動を始める前に、ICDが作動する心拍数の設定や、運動時の上限の目安を主治医に確認しておく。
  • 急なダッシュや無理な追い込みを避け、段階的に運動強度を上げる。
  • 万が一に備え、できるだけ自分の病状やデバイスについて理解している人が近くにいる環境で運動する。

また、運動の可否はデバイスだけで決まるのではなく、もとの心疾患の種類や重症度によっても変わります。ICD植込み患者の多くは心臓リハビリテーションの対象となり、適切に管理された運動が勧められる場合があります。

ただし、単独での登山のように意識消失時の危険が大きい活動や、胸部への強い接触がある競技、リードや本体に負担がかかりやすい運動は、種目ごとの危険性を確認したうえで判断する必要があります。特に接触競技では本体への衝撃に、水泳やラケット競技ではリードへの負担に注意が必要です。

家族や友人と一緒に取り組むか、管理された施設で見守りがある状態で体を動かすのが理想的です。自分の病状とデバイス設定を理解し、無理のない範囲で運動を続けることが大切です。

運動環境における電磁波や磁気のトラブル回避

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屋外やスポーツジムで活動する際は、目に見えない電磁干渉や磁気がデバイスに影響する可能性があることを理解しておきましょう。

最近の機器は対策が進んでいますが、強い磁石や強い電磁場に近づくと、一時的に磁気応答が起きたり、ICDの頻拍検出や治療が抑制されたりすることがあります。まれに盗難防止ゲートなどで設定リセットが報告された例もあるため、過度に近づかないことが大切です。

スポーツシーンに関連して注意したいポイントは以下の通りです。

  • ゴルフカートやトレッドミル、エアロバイクなどでは、植込み部位をモーターやバッテリー部に近づけすぎない。
  • 低周波治療器、EMS、体脂肪計など身体に通電する機器は使用しない。磁気ネックレスなどの磁気治療器も植込み部位に近づけない。
  • 盗難防止ゲート(店舗の出入り口など)は立ち止まらず、中央付近を速やかに通り過ぎる。

また、スマートウォッチなどのウェアラブル端末は、デバイスを植え込んだ部位から15cm以上離して使用することが勧められます。磁石を含む機種やワイヤレス充電器は影響しやすいため、できれば反対側の手に装着し、胸ポケットにも入れないようにしましょう。

充電器やアクセサリー、本体に磁石が組み込まれている製品もあるため、必ず取扱説明書や安全情報を確認しましょう。

もし運動中にめまい、ふらつき、動悸などを感じたら、すぐにその機器や場所から離れてください。離れることで正常な状態に戻ることもありますが、症状が続く場合や不安が残る場合は、早めに主治医または医療機関へ相談することが大切です。

男女問わず推奨される「無理しない」運動習慣

デバイスとの生活においては、記録更新を目指すよりも健康維持と安全な継続を優先することが大切です。激しい競争を伴うスポーツよりも、自分のペースで続けやすい運動が、男女や年齢を問わず取り入れやすいとされています。基本は有酸素運動を中心にしながら、必要に応じて筋力トレーニングやバランス練習を組み合わせる考え方が一般的です。

以下の運動は、負荷を調整しやすく、多くの心臓リハビリテーションで取り入れられています。

  • ウォーキング:始めやすく、運動強度を調整しやすい方法です。
  • 水中歩行:関節への負担を抑えやすい一方で、基礎疾患やデバイスの種類によって適否が異なるため、事前に主治医へ確認しましょう。
  • 固定式自転車:屋外走行よりも負荷を管理しやすく、心拍数や自覚症状を見ながら続けやすい運動です。

運動を長く続けるコツのひとつは、記録を残すことです。血圧、脈拍、息切れ、疲労感、運動時間などのうち、主治医から確認するよう言われている項目を書き留めておくと、診察時に状態を共有しやすくなります。

こうした情報は、運動強度の見直しやデバイス設定の確認が必要かどうかを判断する手がかりにもなります。「デバイスがあるから何もできない」と悲観する必要はありません。

基礎疾患やデバイスの設定に合わせて内容を調整すれば、安全に運動を続けられる方は多くいます。無理をしない姿勢を大切にしながら、心身の調子を整える毎日を目指していきましょう。

まとめ

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ペースメーカーやICDを植え込んだ後でも、主治医の確認を受けながら段階的に運動を再開すれば、安全に体を動かせる可能性があります。術後早期の無理な動作や胸部への衝撃、ICDの不適切作動、磁気や電磁干渉には注意が必要です。ウォーキングなど負荷を調整しやすい運動を選び、体調や症状を記録しながら、自分に合った方法で無理なく続けることが大切です。

あとがき

手術後の不安は当然ですが、デバイスは活動を縛る鎖ではなく、安心のための伴走者です。激しい接触は避けつつ、隣の人と笑い合えるペースで「動く喜び」を再発見しましょう。

大切なのは自分の心臓の声に耳を傾け、主治医と共に一歩ずつ進んでいく勇気です。デバイスと手を取り合い、あなたらしいアクティブな日常を築けるよう応援しています。

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