覚醒した最強牝馬リスグラシューの物語

リスグラシューは、デビュー当初から高い期待を集めながらも、キャリアの後半に真の強さを開花させた稀有な競走馬です。特に古馬になってからのG1での圧倒的なパフォーマンスは、多くの競馬ファンの記憶に鮮烈に残っています。彼女の軌跡は、まさに「大器晩成」を体現した感動的な物語です。本記事では、その偉大な足跡をたどります。

1. リスグラシューとは?遅咲きの名牝の基本情報

リスグラシュー(Lys Gracieux)は、2014年に生まれた日本の競走馬です。彼女は、ディープインパクトのライバルとして知られるハーツクライを父に持っています。

馬名の意味は、フランス語で「優美なユリ」を意味し、その名にふさわしい美しい馬体としなやかな走りが特徴でした。

ハーツクライ産駒の特徴と大器晩成の背景

父であるハーツクライは、現役時代に有馬記念やドバイシーマクラシックといった大レースを制し、種牡馬としても多くの大物を輩出しています。

ハーツクライの産駒は、総じて晩成傾向とされることが多く、成長力に富んでいることで知られています。

リスグラシューもまさにその傾向通り、キャリアの初期は惜しいレースが続きましたが、年齢を重ねるごとに着実に実力をつけ、古馬になってから爆発的な才能を開花させました。

この「遅咲きの名牝」というストーリーこそが、多くの競馬ファンの心を捉えた要因の一つです。

彼女の戦績は、最終的に22戦7勝という数字以上に、その質の高さが際立っています。

特に引退する2019年には、宝塚記念とオーストラリアのG1であるコックスプレートを制覇し、有馬記念も制覇するという、驚異的な快進撃を見せました。

この劇的なキャリアの変遷は、彼女が「大器晩成」という言葉を体現した名馬であることを証明しています。リスグラシューの物語は、諦めずに努力を続ければ必ず花開くということを教えてくれます。

G1レース9勝のアーモンドアイは実績的に史上最強の牝馬と呼べるが、ピーク時の強さ(レーティング)ならリスグラシューも引けを取らない。父ハーツクライ、母リリサイド(母の父アメリカンポスト)から2014年に北海道・安平町のノーザンファームで生まれ、幼虫が美しい蝶へ姿を変えるかの如く、若き日のもどかしい姿から世界的名牝へと飛躍した。

JRA-VAN

2. 焦燥の2歳・3歳戦:善戦を繰り返したクラシック期

リスグラシューは、2歳時にアルテミスステークス(GIII)で重賞初勝利を挙げ、順調な滑り出しを見せました。しかし、G1の舞台では、才能と実力は示しながらも、あと一歩のところで勝利を逃すという惜敗の歴史を辿ることになります。

惜敗の歴史

彼女の2歳・3歳時の戦績は、強豪との激しいレースの中で、常に上位に食い込む安定感がありました。

彼女の2歳時の戦績は、阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)で2着に食い込みました。3歳の重賞チューリップ賞では3着という結果になりました。

特にクラシックG1戦線では、桜花賞(G1)で2着、優駿牝馬(オークス)(G1)で5着、秋華賞(G1)で2着と、エリザベス女王杯(G1)8着とG1の壁に何度も跳ね返されました。

そして、大きく負けることはなかったものの、タイトルを獲ることなく春クラシックを終えました。

G1での厳しい競り合いを経験し続けたことで、彼女の勝負根性とタフさが鍛え上げられたと言えます。また、4歳になった2018年の東京新聞杯(GIII)で久々の勝利を挙げ、古馬になってから再び上昇気流に乗ります。

3. 古馬になってからの飛躍:圧倒的な覚醒

リスグラシューのキャリアは、4歳(2018年)で悲願のG1初制覇を果たし、翌2019年に宝塚記念、コックスプレート、有馬記念で頂点の強さを示しました。

この飛躍の背景には、海外遠征などによる経験の蓄積と適距離への見極めがありました。

距離適性と海外遠征で得た経験

2018年、リスグラシューは東京新聞杯(GIII)で重賞2勝目を挙げ、阪神牝馬ステークス(GII)3着を挟んで春のヴィクトリアマイル(G1)に出走しました。

マイル路線でも高い力を示しましたが2着に惜敗し、続く牡馬混合G1の安田記念では8着となりました。

同年秋、リスグラシューは距離を伸ばしエリザベス女王杯(G1)で鋭い末脚を発揮して差し切り、見事にG1初制覇を果たしました。これは彼女にとって8度目のG1挑戦であり、長く続いた惜敗に終止符を打つ勝利となりました。

この勝利は、彼女の本格的な飛躍のきっかけになったといえるでしょう。さらにこの年の暮れには香港の香港ヴァーズ(G1)に遠征し、世界の強豪を相手に2着と健闘しました。

海外遠征は、環境や相手関係が大きく変わる中で戦う経験を積める点が大きな意味を持つとされます。リスグラシューにとっても、この挑戦が翌年以降のさらなる成長につながった要素の一つだった可能性があります。

古馬になってからのリスグラシューは、レース経験を重ねるごとに完成度を高め、のちの大舞台で頂点級の強さを示す土台を築いていきました。

4. ターニングポイントとなった宝塚記念での圧勝劇

リスグラシューの圧倒的な強さを競馬ファンに深く印象付けたのが、2019年6月に行われた宝塚記念(G1)です。

このレースは、彼女のキャリアにおける最大のターニングポイントとなり、覚醒を確信させる圧勝劇となりました。

異次元のパフォーマンスと世界への証明

宝塚記念は、その年の春のグランプリレースであり、強豪牡馬も多数出走するハイレベルな一戦です。

リスグラシューはこのレースに、紅一点の牝馬として参戦しました。レースは、海外から来日していたダミアン・レーン騎手との新コンビで臨み、抜群のコンビネーションを見せます。

最後の直線では、先行馬をあっという間に捉え、後続に3馬身差をつけるという圧巻のパフォーマンスで勝利しました。この勝利で勢いと実績を携え、秋にはコックスプレートへ挑戦する足がかりとなりました。

そして豪G1のコックスプレートでは、豪快なまくりをみせ、直線173mしかないムーニーバレー競馬場で鋭く突き抜け勝利しました。この勝利は、日本調教馬として初めて制するという快挙を成し遂げました。

5. 伝説のラストラン:有馬記念での完璧なフィナーレ

リスグラシューの現役生活の締めくくりとなったのは、2019年12月の有馬記念(G1)です。このレースは、競馬ファンにとって忘れられない、まさに伝説的なラストランとなりました。

彼女は、日本最強の座を揺るぎないものにする圧倒的な圧勝で、有終の美を飾りました。

5馬身差の圧勝:歴史に残る年度代表馬

この年の有馬記念には、ライバルとしてアーモンドアイやサートゥルナーリアなど、豪華なメンバーが揃いました。

リスグラシューは、コックスプレート(G1)からの帰国初戦でしたが、ダミアン・レーン騎手との再コンビで出走しました。

レースは、最後の直線で異次元の末脚を繰り出し、後続を大きく引き離すという、衝撃的なパフォーマンスを見せつけます。その着差は5馬身(当時の報道より)であり、観客を熱狂させ見事有終の美を咲かせます。

この有馬記念の圧勝により、リスグラシューは牝馬としては史上初となる同一年の春秋グランプリ(宝塚記念と有馬記念)制覇という快挙を達成しました。

この偉業と圧倒的なパフォーマンスが評価され、2019年のJRA賞年度代表馬に選出されました。

引退後は繁殖牝馬として期待されており、その血が未来のスターホースを生み出すことが待ち望まれています。リスグラシューの現役生活は、大器晩成のドラマを完璧な形で締めくくる、歴史に残る素晴らしい物語です。

まとめ

リスグラシューは2歳でアルテミスSを制し、阪神JFや桜花賞、秋華賞で惜敗を重ねながら着実に力を伸ばしました。4歳は東京新聞杯勝利からヴィクトリアマイル2着、安田記念8着を経てエリザベス女王杯で悲願のG1初制覇を果たし、香港ヴァーズ2着も経験しました。

2019年には宝塚記念、コックスプレート、有馬記念を圧巻の内容で勝ち、牝馬初の同一年春秋グランプリ制覇と年度代表馬に輝いた大器晩成の名牝です。

あとがき

ここまで読んでくださりありがとうございます。リスグラシューの感動的な大器晩成の物語は、いかがでしたでしょうか。

私は、2021年はうつを患い辛い思いをしましたが、このリスグラシューのラストランを見てからこの馬の活躍を見返し、「物事には諦めなければきっと良いことがある」と学びとても元気と勇気が貰え競馬が好きになりました。

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