障がい者水泳の効果とは?心身へのメリットと安全な始め方

スポーツファン
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「運動したいけど身体が心配…」そんな悩みに、水泳が優しく応えます。障がいや年齢に関わらず、適切な環境と配慮があれば水泳は心と身体に多くの良い効果をもたらす、始めやすい運動です。この記事では、水泳の具体的なメリットと、安心して始めるための手順や場所の探し方を解説します。

なぜ障がいがあっても水泳はおすすめ?3つの大きな効果

水泳がもたらす効果は、単に体力が付くことだけではありません。生活の質(QOL)そのものを向上させる3つの大きなメリットがあります。ここでは、3つの効果を一つずつ見ていきましょう。

【身体の効果】浮力が負担を減らしリハビリにも最適

水の力は主に3つあります。水深にもよりますが、「浮力」によって、膝や腰などにかかる体重の負荷は約1/10程度まで軽くなると言われています。痛みや麻痺があっても、陸上よりずっと楽に身体を動かせるでしょう。

次に「水圧」が、全身を優しくマッサージするように血行を良くしてくれます。むくみや冷えの改善にも繋がります。そして「水の抵抗」が、ゆっくり動くだけでも体幹まわりの筋肉が働き、姿勢やバランスを整えやすくなります。

水中では沈んでいる物の体積に応じて浮力が加わります。おへその高さまで水につかると体重の約半分、胸までつかると体重の約30%の荷重になります。こういった特徴からも、スポーツ医学の分野では手術後に膝や足関節に負荷をかけず、それでいて筋力を強化したい場合に水中で運動するということを行っています。


亀田メディカルセンター スポーツ医学科

身体が楽になるだけでなく、水泳は心にも良い影響を与えます。次に、精神的な効果について見ていきましょう。

【心の効果】ストレス軽減と「できた!」が自信に繋がる

水の浮遊感や心地よさは、心の緊張をほぐすリラクゼーションになります。また、水泳は「顔を水につける」といった小さな目標を設定しやすく、その一つ一つの達成感が自己肯定感を育み、大きな自信に繋がります。

自分の身体をコントロールできたという感覚は、日常生活における意欲や自己肯定感の向上につながることもあります。水の中では誰もが自由になれる、そんな感覚を味わってみてください。

心身ともに良い状態になったら、水泳がもたらす社会的な効果を見ていきましょう。

【社会性の効果】コミュニケーションの輪が広がる

プールは、自宅や職場・学校とは違う「第三の居場所」になり得ます。共通の活動を通して自然なコミュニケーションが生まれ、社会的な孤立感を和らげてくれるでしょう。

「水泳」という共通の目的や話題があるため、年齢や障がいの有無に関わらず、会話のきっかけが生まれやすいのです。

最初は挨拶を交わす顔見知りができるだけでも、生活にハリが出ます。指導者や仲間からの一言が励みになったり、同じ境遇の仲間と出会って情報交換ができたりする貴重な場になることもあります。

次の章では、障がいのある方が安心して水泳を始めるための具体的な手順を解説します。

初めてでも安心!障がい者が水泳を安全に始める4つのステップ

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「やってみたい」と思っても、いきなりプールに行くのは少し不安かもしれません。不安をやわらげる3つのステップを紹介します。

ステップ1:最も重要!まずは主治医に相談しよう

自己判断は絶対にNGです。特に持病や障がいがある場合は、水泳を始める前には、必ずかかりつけの医師やリハビリの担当者に相談しましょう。

相談する際には、「運動の強度」や「特に注意すべき動きや症状はあるか」などを具体的に聞いておくと良いでしょう。施設によっては書類の提出が必要な場合もあるため、その点も併せて確認しておくとよいでしょう。

医師から許可が出たら、次は安心して通えるプールを探す段階です。

ステップ2:施設選びのポイント(設備・指導員の有無)

施設を選ぶ際は、「通いやすさ」だけでなく、「安心して利用できるか」ということが大切です。「設備」と「人」の両面からチェックしましょう。

まず、設備面として、駐車場からプールサイドまで段差なく移動できるか、入水のためのスロープや昇降リフトが設置されているか、といった点は大切なポイントになります。

その他にも、プール専用の車いすを借りられるか、通路や階段に十分な手すりがあるか、更衣室やトイレが使いやすい設計になっているかも確認しましょう。

そして、人的なサポート面も重要です。障がいのある方の利用実績が豊富かどうかは、施設側の理解度を測る一つの目安になります。

専門知識を持つ指導員が在籍しているか、介助者も一緒に入水できるかどうかも、事前に確認しておくと安心です。万が一の事態に備えて、緊急時の対応がしっかりと決められているかも確認しておきましょう。

利用したい施設が見つかったら、次は持ち物の準備です。

ステップ3:必要なものリストと準備のコツ

基本的な水泳用具に加えて、ちょっとした工夫で当日の快適さが大きく変わります。特に「着替えやすさ」を意識したアイテム選びがポイントです。

水着、スイムキャップ、ゴーグルといった基本のアイテムに加え、ポンチョ型のタオルや、防水バッグがあると非常に便利です。着脱しやすいセパレートタイプの水着を選ぶのも良いでしょう。

水泳を始める前の不安を解消!よくある質問Q&A

ここでは、多くの方が水泳を始める前に疑問に思うことについて、触れてみます。

Q. 発達障害の子どもにスイミングはどんな効果がありますか?

お子さんの心身の成長をサポートする上でも、非常に多くの良い効果が報告されています。特に「感覚統合の促進」と「自己肯定感の向上」に繋がりやすいと言われています。

  • 情緒面:水中での浮遊感が心と身体をリラックスさせ、パニックや多動を落ち着かせる効果が期待できる。
  • 学習面:「自分のペースで進められる」「ルールがシンプル」という特性が、集団行動が苦手な子にも合いやすい。
  • 成功体験:「できた!」の積み重ねが自信になり、他のことへの挑戦意欲を引き出す。

発達障害への理解と指導経験が豊富なコーチがいるスクールを選ぶことが、何よりも大切です。

身体的な障がいがある場合の疑問についても見ていきましょう。

Q. 車いすでもプールに入れますか?

もちろんです。近年、車いすユーザーが利用できるバリアフリーのプールは全国的に増えています。

障がい者スポーツの普及に伴い、スロープや昇降リフト、プールサイドまで行ける専用の車いすなどを備えた施設が増加しているためです。

多くの障がい者スポーツセンターや、一部の公営プールなどで対応しています。ただし、設備の有無や利用ルールは施設ごとに異なるため、必ず事前に電話で詳細を確認することが重要です。

最後に、実際にどこで水泳ができるのか、具体的な場所の探し方をご紹介します。

どこでできる?相談できる場所やスイミングスクールを見つけよう

どこに行けばいいのか、ご自身の目的や状況に合わせて、最適な場所を見つけましょう。

お住まいの地域の障がい者スポーツセンター

初めてで不安な方に、おすすめなのがこの施設です。障がい者スポーツの専門家が常駐している、とても心強い味方です。

設備がバリアフリーなのはもちろん、障がいへの深い知識と指導経験を持つ指導員がいるのが最大のメリットです。一人ひとりの状況に合わせたプログラムを相談できます。

まずは「お住まいの都道府県名 障がい者スポーツセンター」で検索してみてください。日本パラスポーツ協会のサイトで、全国の施設一覧を確認することもできます。

自治体が運営する公営プール(障がい者向けコースや割引も)

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自宅の近くで気軽に始めたいなら、地域の公営プールが最適です。利用料の割引制度も充実しています。

一番の魅力は、なんといっても「通いやすさ」です。また、自治体や障がい者スポーツセンターの中には、障害者手帳を提示すると、本人と介助者1名まで利用料が無料または割引になるところがあります。

「お住まいの市区町村名 プール 障がい者割引」などで調べてみましょう。施設によっては、障がい者専用のコースや水泳教室を実施していることもあるため、ウェブサイトや地域の広報誌をチェックしてみてください。

各地域のパラ水泳連盟や競技団体

もし水泳を続けていく中で、「もっと上手くなりたい」「競技会に出てみたい」という目標が芽生えたら、専門の競技団体に連絡を取ってみるのが次のステップです。

同じ目標を持つ仲間と出会え、より専門的な指導を受けることができます。もしかしたら、パラリンピック出場も夢ではないかもしれません。

一般社団法人日本障がい者スイミング協会」や「日本知的障害者水泳連盟などの公式サイトを見てみましょう。初心者向けの体験会情報が掲載されていることもあります。

まとめ

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水泳は、身体への負担が少なく、心と身体、そして社会との繋がりにまで良い影響をもたらす、障がいのある方や高齢の方にとって最高のスポーツの一つといえるでしょう。

泳ぐかどうかは、その後で決めれば大丈夫です。まずは「プールを見学させてもらえませんか?」と、電話をしてみることから始めてみませんか。その小さな一歩が、あなたの世界を大きく広げるきっかけになるはずです。

あとがき

この記事を書くきっかけは、知人が85歳で見事にアクアスロンを完走したことでした。私がいつも行くプールでも、障がいのある方やご高齢の方が、水の中では本当に気持ちよさそうに体を動かしています。

水泳は年齢や障がいといった壁を軽々と乗り越えさせてくれる、誰にとっても優しいスポーツなのだと思います。この記事が、誰かの「やってみたい」という気持ちを後押しできたら、とても嬉しいです。

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