障がいを超えて触れる喜び!共遊カードゲーム「タッチャレ」の秘密

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「見える人」と「見えない人」が一緒に遊べるカードゲームタッチャレは、南山大学の学生が開発しました。このゲームは視覚に頼らず、触覚を頼りに楽しむというコンセプトを持っています。開発の背景には、障がいを持つ家族への想いと、学生たちの情熱がありました。本記事では、開発経緯、ゲームのルール、そして商品化に至るまでの道のりについて詳しくご紹介します。

タッチャレとは?共遊カードゲーム誕生の背景

カードゲームタッチャレは、視覚に障がいのある人もない人も一緒に楽しむことを目指して開発されました。

このゲームは、南山大学経営学部の川北真紀子教授のゼミに所属する、田中なつ子さん、中山絵里加さん、市川雄大さんという3名の学生によって生み出されました。

商品開発やマーケティングを研究するゼミ活動の中で、このゲームが生まれたきっかけは、開発メンバーの一人である市川雄大さんの個人的な経験にあります。

市川さんには視覚に障がいを持つ叔父がおり、幼い頃に「目が見えないというだけで、一緒に遊べなくてすごく哀しかった」という強い想いがあったそうです。その経験が、障がいの垣根を超えて楽しめる遊びを創る開発の原動力となったと言えます。

ゲーム名のタッチャレは、タッチ&チャレンジの略称です。「見える人」は日常で視覚に頼りがちですが、あえて「触る」という感覚にチャレンジし、見える人と見えない人の困難に立ち向かおう、という意味が込められています。

このネーミングからも、開発者たちの、共生社会への願いが感じられるのではないでしょうか。

開発チームはこのゲームを通じて、視覚障がい者が日本で約30万人、世界で2億人いると言われる中で、世界人口のすべての人々がタッチャレで遊ぶことで、障がいへの理解を深める機会となり、垣根を取り払うことができたならと強い希望を持っています。

彼らの情熱と、共遊への願いが込められたこのゲームは、単なる遊び道具以上の意味を持っていると言えるでしょう。

タッチャレという共遊カードゲームが、どのような経緯で誕生し、どのような願いが込められているのかを紹介しました。

特に、個人的な経験が開発の大きな動機となった点や、ゲーム名に込められた「チャレンジ」の意味が、この製品のコンセプトを強く示していると言えます。

触覚を駆使する斬新なルールとカードの仕様

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タッチャレの最もユニークな点は、カードに施された触覚的な工夫にあります。このゲームは、視覚的な記憶に頼らずに楽しめるように設計されています。

カードの大きさは誰もが馴染み深いトランプと全く同じサイズです。しかし、その表面には、手触りの異なる4種類のマークが貼り付けられています。使われている手触りの種類は、「ざらざら」「つるつる」「でこぼこ」「ふわふわ」の4つです。

トランプと同じサイズで手触りが異なるマーク

これらの手触りは、マークの形である丸、バツ、三角、四角と組み合わされ、全部で16種類の組み合わせが作られています。

それぞれの組み合わせのカードが2枚ずつあり、合計32枚のカードで構成されています。これに加えて、マークのないジョーカーも用意されています。

これにより、視覚情報がなくとも、触覚と記憶を頼りにゲームを進めることが可能になっています。視覚情報に頼る従来のカードゲームとは異なり、タッチャレでは、指先の感覚だけが頼りとなります。

この設計は、視覚に障がいのある人が不利にならないよう、ゲームの公平性を保つ上で非常に重要だったと言えます。

触覚だけで16種類の組み合わせを判別し、ゲームを進行させることは、見える人にとっても新鮮な「チャレンジ」となるのではないでしょうか。

このカードセットで楽しめるゲームとして、開発チームは、一般的なカードゲームである「ババ抜き」「豚のしっぽ」「カルテット」を挙げています。

誰もが知るシンプルなルールで遊べることで、初めての人でも、また視覚に障がいのある人もない人も、すぐに楽しむことができるようになってます。

共通のルールで、新しい感覚を使って遊ぶという点は、共遊というコンセプトを具現化していると言えます。

開発過程で得られた視覚障がい者との「気づき」

タッチャレは、開発チームの思い込みだけで作られたわけではありません。実際に視覚障がいを持つ人々の意見を深く取り入れ、試行錯誤を重ねて改良されました。このプロセスが、ゲームの完成度を大きく高めたと言えるでしょう。

ユーザーの意見を取り入れたマークの工夫

開発にあたり、視覚障がい者団体である「さくらんぼ」や岡崎の盲学校の生徒さんたちに体験会を実施し、具体的な意見をうかがったそうです。

そこには、開発チームにとってはっとするような様々な気づきがあったとされています。例えば、マークの大きさについてです。

当初、開発チームは「大きいほうがわかりやすいだろう」と推測していましたが、参加者からは「小さいほうがわかりやすい」という意見が出ました。

これは、点字がそこまで大きくないこと、またマークが大きいと指でなぞるのに時間がかかってしまうためだそうです。この意見を受け、マークの大きさは親指に収まるくらいの大きさに修正されました。

この点一つをとっても、開発チームがユーザーの実際の利用体験を重視していることがわかるのではないでしょうか。

また、カードにマークを貼る場所についても、最初は真ん中でしたが、カードを下側で持ったときに触りやすいようカードの下側に移動されました。

さらに、カードを何枚も持ったときに重なっても触れることができるように、マークを一つではなく両端につけるという工夫も追加されました。

これらの変更は、ユーザー目線に立った開発の重要性を示しているのではないでしょうか。マークに使う「つるつる」「ざらざら」などの紙についても、開発チームの3名は紙の専門店に足を運び、触り心地を実際に確かめながら慎重に選んだそうです。

徹底した現場主義と、障がいを持つ人への配慮が、ゲームの細部にまで反映されていると言えます。

タッチャレがもたらす共生社会へのメリット

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タッチャレは単なるボードゲームという枠を超え、共生社会の実現に向けた教育的なツールとしての価値も持っていると考えられます。

このゲームを通じて、「見える人」は普段意識しない触覚の重要性に気づき、視覚に障がいのある人が世界をどのように認識しているのかを、遊びながら体験できます。

障がいの垣根を取り払う体験

このゲームのコンセプトは、「見える人」があえて視覚に頼らず、「見えない人」と同じ土俵で「触覚」という感覚に集中することです。

これにより、両者が対等な立場で楽しみ、競い合うことが可能になります。これは、日常生活ではなかなか得られない貴重な共遊体験だと言えます。

ゲームという共通の体験を通じて、視覚障がい者への理解が深まり、心理的な距離や障がいの垣根を自然に取り払うことに繋がるかもしれません。

また、触覚という普段使わない感覚を研ぎ澄ませる訓練になる点も、メリットの一つとして挙げられるのではないでしょうか。

見える人にとっても、新しい感覚野を使うことは、脳の活性化に役立つ可能性があります。このゲームは、世代や障がいの有無を超えたコミュニケーションの機会を提供し、多様な人々が交流する場を生み出す可能性があります。

開発チームは、このゲームが世界中のすべての人々に広がり、遊んでもらうことを目標としています。

「タッチャレ」開発の軌跡

タッチャレは、2022年12月に開催された全国の大学ゼミによる商品企画コンペで最優秀賞を受賞しました。

受賞は、ゲームとしての独創性だけでなく、視覚障がいのある人と目が見える人が一緒に楽しめるという社会的意義や実現可能性が高く評価された結果です。

その後、学生チームと株式会社明成孝橋美術が連携し、クラウドファンディングを経て、現在オンラインで販売中です。

完成に至るまで、タッチャレは30回以上の体験会を行い、素材やカードの手触り、マークの配置などを改良してきました。

こうした試行錯誤を通じて、視覚障がいのある人も目が見える人も一緒に楽しめる共遊カードゲームとして形になっています。

~この「タッチャレ」が、昨年(2022年)12月に全国の大学のゼミが商品企画を競うイベントで優勝。大阪の印刷会社と協力して、商品の開発を進めることになっています。年内の販売を目指していますが、それまでに体験会を開いて多くの人にアドバイスをいただき、ブラッシュアップできればと考えています。視覚障碍者は日本で30万人、世界では2億人いると言われています。世界人口は80億人。そのすべての人がタッチャレで遊ぶことで、視覚障がい者への理解を深める機会になり、障がいの垣根を取り払うことができたとしたらとてもうれしいです。~

brother

まとめ

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タッチャレは、「見える人」と「見えない人」が触覚を通して一緒に楽しめる共遊カードゲームです。

南山大学のゼミ生が、視覚障がい者の意見を取り入れて開発しました。2022年の全国商品企画コンペで最優秀賞を受賞し、企業との連携を経て商品化・販売が実現。障がいの有無を超えて、人と人をつなぐ新しいコミュニケーションの形を提案しています。

あとがき

タッチャレは、見える・見えないの違いを超えて、誰もが一緒に楽しめるように生まれたゲームです。

学生たちの想いが形になったこの挑戦は、触れることを通して「共に生きる」喜びを伝えてくれます。あなたも、指先から広がる新しいコミュニケーションを体験してみませんか。

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