アシュタンガヨガをしていて、なにか自分の中で変わってきたなと思ったことはありませんか。アシュタンガヨガとは、呼吸と動きを連動させて集中力を高め、深い瞑想へと導く伝統的なヨガの流派です。アシュタンガヨガには、ただポーズが上手くなることより、ずっと奥深い意味があります。その意味は、昔から伝わる教えと最新の研究でわかってきた、私たちの脳と心に起きる変化に隠されています。この記事では、毎日の練習が実際にあなたの脳や心にどんな変化をもたらしているのかをお伝えします。
アシュタンガヨガはなぜ「決まった順番」なのか
アシュタンガヨガの決まったアーサナの流れは、私たちの心と体を安全に整えていくために、長い間磨き上げられてきた洗練されたシステムです。
ポーズとその順番に深い意味があります。練習を重ねることでこの流れの大切さを実感できるでしょう。
アシュタンガヨガの6つのシリーズは、心と体を段階的に育てるように作られています。まずプライマリーで心身の土台をしっかり整えます。
次にインターミディエイトシリーズで神経系に働きかけていきます。この着実なステップこそが、安全で深い心身の変化をもたらしてくれるでしょう。
アシュタンガヨガが脳に起こす驚きの変化
アシュタンガヨガのシーケンスを続けるうちに、以前より集中できるようになったと感じる方も多いのではないでしょうか。呼吸と視線だけに意識が向くと、頭の中が静かになり、余計な考えが消えていくような体験をする人も多いでしょう。
「ドリシュティ」と「ウジャイ呼吸」の効果
この集中力の向上には、脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」が関係している可能性があります。
「前頭前野(ぜんとうぜんや)」とは、脳の「思考の司令塔」と呼ばれる、思考・判断・感情のコントロール・行動の抑制など、重要な働きをしている部位です。
アシュタンガヨガでは「ドリシュティ」と「ウジャイ呼吸」という伝統的な技法が用いられています。この技法は、集中した状態を作り出すことを目的としていて、結果として脳の機能にも良い影響を与える可能性があると考えられています。
「ドリシュティ」は一点を見つめることで精神を安定させる技法です。アーサナごとに視点が決められています。視線を定めることで余計な雑念から意識を逸らし、より深い集中状態へと導くとされています。
「ウジャイ呼吸」は、動きに連動した胸式呼吸によって、集中と内側への呼吸の気の流れをコントロールさせます。動きに連動してこの呼吸法を行うことで、体の内側から血行を促進し、内臓器官を活性化する効果が期待できます。
また、ゆっくりとした深い呼吸は、心身を落ち着かせる効果があることが知られています。私たちは1日に2万回以上も呼吸を繰り返していますが、息を吸うときは体が活動モードになり心拍数が上がり、息を吐くときは体がリラックスして心拍数が下がります。
緊張や焦り、怒りを感じるときに深呼吸をすると落ち着くのは、この仕組みがあるからなのです。
記憶力や学習能力も向上?脳の変化の秘密
アシュタンガヨガでの新しいポーズの順番や名前を覚える、毎日の練習が脳を活性化させています。アシュタンガヨガは「動く瞑想」と呼ばれます。
同じシークエンスを繰り返しするので、体の変化にすぐに気付きます。昨日は楽だったポーズが今日は難しく感じたり、微妙な変化に気づきやすくなります。
定期的にヨガを行うことで、記憶と情報処理、感情の調節を担う脳の領域にプラスの影響をもたらすことが期待されています。
これにより、私たちの脳が年齢に関係なく新しい趣味が長続きしたり、覚えが早くなったりと嬉しい変化に繋がるかもしれません。この繰り返しの練習が、脳の記憶を司る重要な部分を鍛えてくれると考えられているのです。
マインドフルネスによる感情コントロールの脳科学
マインドフルネスによって、昔ならカッとなっていたような場面でも冷静な自分でいられるようになります。それは脳内で「感情のアクセル役」と「理性のブレーキ役」が連携を始めた証拠です。
ヨガの実践により、感情をつかさどる扁桃体(へんとうたい)にプラスの影響をもたらすことが期待されています。この部分を刺激することで、不安を落ち着かせながら幸福感を高められると考えられています。
この効果を支えるのが「マインドフルネス」です。マインドフルネスとは、今この瞬間の感情や思考を判断せずに観察する能力のことです。
アシュタンガヨガは感情的な反応を「今自分はイラッとしているな」と客観視する力を育てます。これがマインドフルネスの実践そのものです。
「動く瞑想」と呼ばれるアシュタンガヨガにより、日常でもマインドフルネスを活用できるようになります。
メンタルヘルスへの嬉しい効果―なぜヨガで心はこんなに安定するの?
アシュタンガヨガがくれる贈り物は、丈夫な体や冴えた頭だけではありません。あなたの毎日の練習は、知らず知らずのうちに、あなた自身をケアするとても大切な時間になっています。
ストレスに強くなる!自律神経が整うメカニズム
忙しい毎日を送る私たちにとって、体のアクセル役とブレーキ役を自動で調整してくれる「自律神経」のバランスは、元気の源です。アシュタンガヨガの呼吸と動きを連動させる練習は、このバランスを整えるのがとても得意です。
「ウジャイ呼吸」は、息を吸ったり吐いたりする長さを意識するだけで、高ぶった神経を優しくなだめ、瞬時にリラックスさせてくれます。
また、ヨガを継続することにより、ストレスを感じた時に出るホルモン「コルチゾール」の分泌を抑える効果があることも、研究によりわかっています。
深い呼吸法や瞑想が交感神経の過剰な働きを抑え、リラックス状態にさせて、精神的な安定がもたらされ、不安や抑うつの軽減につながると言われています。
不安や気分の落ち込みが、ふっと軽くなる理由
なにか心配事が起きた時に、そこから抜け出せなくなることはありませんか。
ヨガを続けることで、脳の中にある様々な物質が変わることが研究でわかってきました。特に、リラックスに関わるGABA(ガバ)という物質が増える可能性があることが、一般的なヨガなどの研究で報告されています。
ヨガをした後、私たちの脳では「GABA(ギャバ)」という、物質が増える可能性があることがわかりました。「GABA(ギャバ)」には、イライラや不安な気持ちを和らげる働きがあります。
こうした体の中での変化が、気持ちを安定させて、心地よい気分につながる可能性があると考えられています。アシュタンガヨガも同じヨガの仲間なので、似たような良い変化が期待できるかもしれません。
練習の中で出会う、自分自身との静かな対話
アシュタンガヨガをしていると、いつの間にか頭の中のざわめきが消え、ただ自分の動きと呼吸だけに意識が向くことがあります。呼吸と動作に集中することで、余計な思考から離れ、その心地よさがより自分自身に集中していきます。
日常の中でも、この集中力は力を発揮してくれます。仕事や人間関係で感情が揺れたとき、自分の内側に目を向けて「いま何を感じているのか」と静かに問いかけることで、一呼吸おく余裕が生まれます。
アシュタンガヨガの練習を通じて、そうした心の余裕が育っていくように感じることができるでしょう。このような変化は、科学的にすべてが証明されているわけではありません。
しかし、多くの実践者が共通している体感でもあります。練習が習慣化した時、ふとした瞬間にその変化に気づくことがあるかもしれません。
まとめ
プライマリーシリーズを終えたら、アシュタンガヨガの本当の旅はここから始まるのです。ポーズが上手くできるかどうかよりも、その過程で得られるひとつひとつの気づきや、脳科学も証明するその確かな効果を信じてください。
あなた自身の無限の可能性に出会うために日々の練習を続けてみてください。
筆者のあとがき
私がアシュタンガヨガを始めたのは、体を動かすことが好きだったからです。最初は普通のヨガをやっていましたが、物足りなさを感じていました。アシュタンガヨガに出会った時、「これだ!」と思いました。
最初は何も考えずに体だけを動かしていました。しかし、ひとつひとつのアーサナに深い意味があることを知り、もっとアシュタンガについて学びたいと思うようになりました。
まだまだ学び始めたばかりですが、この奥深い世界をもっと探求していきたいと思っています。今では生活の一部になり、楽しんでやっています。
これからも一歩ずつ、自分のペースで続けていきたいと思っています。あなたの練習にも、きっと素晴らしい気づきが待っているはずです。一緒に学び続けていきましょう。
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