障がいのある人もない人も一緒に楽しめる「デュアルスキー」は、スポーツを通じた社会参加の新たな可能性として注目されています。教育現場や企業のCSR活動、地域ボランティアにとっても関わりやすい支援の形です。この記事では、デュアルスキー導入によるメリットと支援の具体的な方法についてご紹介します。
デュアルスキーとは?スポーツを通じた支援の第一歩
デュアルスキーは、障がいのある人が雪上を滑走できるように開発された補助器具を使用するスキー種目です。視覚障がいや下肢に障がいのある人が、サポーターとともに、安全にスキーを楽しめるよう工夫されています。
日本国内でも類似の器具であるチェアスキーがパラアルペンスキー競技で使用されており、全国のスキー場や障がい者スポーツ団体によって体験イベントが開催されています。
この競技は、単なるレクリエーションではなく、身体機能の維持・向上や心理的な達成感をもたらす点が注目されています。
また、視覚障がいのある方がガイドスキーヤーとペアを組み、一体となって滑走することで、協調性や信頼関係の構築にもつながっています。
学校や企業、地域団体がこのデュアルスキーに関わることは、障がい者の社会参加を後押しする一歩になるでしょう。誰もがウィンタースポーツを楽しめる社会づくりを目指して、まずはこの競技を「知る」ことから始めてみてはいかがでしょうか。
CSR活動における新たな一手:企業とパラスポーツの接点

企業が社会貢献活動としてデュアルスキー支援に関わる動きが徐々に広がりつつあります。
CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、障がい者スポーツへの支援を行うことは、社会的意義を持つ取り組みと言えます。加えてそれは、社員の意識向上や企業ブランドの向上にもにもつながるでしょう。
こうした活動は、利益追求とは異なる価値基準を持ち、地域社会や障がい者の方々との関係性を築く一助となっているとも捉えられます。
CSR活動としての支援には、以下のような具体的な形が考えられます。
- イベントや大会への協賛・物品提供
- 従業員のボランティア参加促進
- 寄付型自動販売機の設置による支援金調達
- 社内研修でのインクルーシブ教育の導入
インクルーシブ教育とは、障がいがある人もない人も一緒に学ぶ教育のことです。企業研修などへの導入をとおして、社員がいろいろな人を理解し、みんなで支え合う気持ちを育てることができます。
このようなアプローチにより、企業は地域とつながりながら、持続可能な支援モデルの構築に貢献することができるといえるでしょう。
資金面のハードルを超える:寄付・協賛の仕組みと活用
デュアルスキーの導入や支援活動を進めるにあたって、資金の確保は大きな課題の一つといわれています。特に用具の購入や専門スタッフの派遣には一定の費用が必要なため、企業のCSR活動や寄付、協賛といった支援の仕組みが重要な役割を果たします。
資金調達の仕組みには以下のようなものがあります。
- 企業のCSR部門による寄付・機材提供・ボランティア派遣
- 地域クラウドファンディングの活用による市民参加型資金調達
- NPO・財団とのパートナーシップによる継続的な運営支援
- 自治体の補助金・助成金制度の活用
これらの方法を適切に組み合わせることで、資金面の壁を越えてデュアルスキーの普及・定着を目指す動きが進められています。支援を希望する側も、協賛企業も、それぞれの目的や役割に応じた関わり方が求められています。
地域密着の支援力:地方でこそできること
地方では人口減少やリソースの限界といった課題がある一方で、地域密着型の強いネットワークが生かされています。デュアルスキーの活動においても、こうした地域資源を活用した支援の仕組みが形成されつつあります。
地方の強みとしては、以下のような点が挙げられます。
- 地域住民のつながりを活かした柔軟な支援体制
- 自治体・観光協会・教育機関の横断的な協力
- 参加者との距離が近く、ニーズを反映しやすい環境
- 地域課題(過疎化など)と支援活動の両立
特に小規模自治体では、地域全体で取り組むことで、持続可能な支援モデルを確立しやすい傾向がみられます。都市部とは異なるアプローチで、多様な支援のかたちを模索する動きが広がっています。
「共生社会」への体感型アプローチとしての可能性

デュアルスキーは、障がいの有無を超えて共に滑ることができる数少ないスポーツのひとつです。そのため、「共生社会」を体感的に学ぶ教育的な場としても注目されています。
例えば、一般のスキーヤーと障がい者が同じゲレンデで活動する場面では、自然と相互理解が生まれる場となるでしょう。参加者は「違い」ではなく「共通点」を感じることで、偏見のない視点を育む機会を得ることができます。
このような体験を通じて得られる気づきには、以下のようなものがあります。
- 誰もが楽しめる環境づくりの大切さを実感する
- 支援される側と支援する側の境界が曖昧になる体験
- 「できない」から「できた」への変化を共有する喜び
インクルーシブ教育を実践している学校や、福祉を重視する企業・自治体においても、こうした「体感型」の活動は、理念を具体的な行動に落とし込む有効な手段と言えるでしょう。
体験を通じての理解を活かし、支援のあり方を見直す機会にもなるかもしれません。
インクルーシブ観光×デュアルスキー:新しい地域活性の形
インクルーシブ観光とは、障がいの有無に関係なく、誰もが楽しめる観光のあり方を目指す取り組みです。
近年では、雪山でのアクティビティとして「デュアルスキー」を観光資源の一つと捉え、地域活性化につなげる動きが広がりつつあります。
例えば長野県白馬村では、観光協会、自治体、NPOが連携し、障がい者スキー体験会を観光プログラムに組み込む事例が見られました。
これにより、地域外からの参加者やその家族が滞在し、観光業への経済波及効果も期待されています。
インクルーシブ観光を進めるには、次のような取り組みが大切です。
- 宿泊施設や移動手段のバリアフリー化
- 障がい者対応ガイドの育成
- 地域住民・企業・自治体による情報発信の工夫
- NPOと連携した体験型プログラムの設計
デュアルスキーは、冬の観光シーズンに新しい価値をもたらす可能性を秘めています。インクルーシブ観光を通じて、地域と多様な人々とのつながりが強まり、観光のあり方そのものを見直す契機になるといえるでしょう。
障がいのある子どもたちの“笑顔”が示す価値
デュアルスキー体験に参加した障がいのある子どもたちの笑顔や感謝の言葉は、支援活動の意義を深く実感させてくれるものです。
こうした体験が示す価値は、以下のような点に集約されます。
- 子どもたちの挑戦を応援することで得られる達成感
- 家族の心に残る「特別な時間」の創出
- 支援者自身の気づきや人間的成長
- 地域全体での一体感の醸成
支援活動は単なる奉仕ではなく、参加者と支援者の双方にとって価値ある体験となるでしょう。子どもたちの笑顔は、その象徴的な成果であり、多くの人にとって関わる意義を再認識させるものといえるでしょう。
明日からできる支援ステップ:関わり方ガイド
デュアルスキーに関心があっても、「何から始めればいいのか分からない」と感じている方も多いかもしれません。
そこで、教育関係者・企業・地域ボランティアというそれぞれの立場から、最初の一歩として取り組める具体的なアクションをご紹介します。無理のない範囲で、少しずつ関わることをきっかけに、継続的な支援につながる可能性が広がるのではないかと考えられます。
具体的な支援のステップは以下の通りです。
- 教育関係者:授業やクラブ活動でパラスポーツを紹介する機会を設ける
- 企業のCSR担当者:関連団体と連携し、寄付や協賛イベントを検討する
- 地域ボランティア:地元で開催されるデュアルスキーイベントに参加してみる
- 共通の第一歩として、体験会や説明会へ参加し、現場の雰囲気を知る
どの立場であっても、まずは情報を得て行動に移すことが大切です。支援活動は一人ではなく、仲間や地域とともに行うことで、より実りあるものになっていくでしょう。
まとめ

デュアルスキーは、障がいのある人々にスポーツの楽しさと達成感を届けるだけでなく、教育・企業・地域といった多様な立場の人々が支援を通じて関われる貴重な機会を提供しています。
さまざまな関わり方の中から、自分らしい支援の形を見つけることができるかもしれません。
感想
私は沖縄県にあるA型の就労継続支援施設で働いています。実際にやったことはありませんが、テレビやインターネットの動画で見たデュアルスキーは、障がいがある人でも補助を受けながら本格的に滑ることができるという点がすごいと感じました。
沖縄には雪が降らないので、正直スキーには縁がないと思っていました。でも、こういう活動が本土のほうで行われていて、支援者や地域の人たちが協力していると聞いて、少しうらやましく思いました。
障がいがあっても「できることが広がっていく」という希望が感じられました。私たちのような利用者にとっても、こうした話を知ること自体が励みになりますし、他の人の体験談を通じて世界が広がる気がしています。
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